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​いしかわじゅん - 漫画家

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ぐゎらん堂で、一番若い時代をどれほど無駄遣いしただろう。なにをするでもなく、ただ決して美味くないコーヒーを前に、常連たちとだらだらと馬鹿話をして時間を浪費していた。でも、それがなんて楽しかったことだろう。たまにはみんなと出かけたり、野球大会をやったりして、団体行動は嫌いなはずなのに、やけに楽しかった。  

東急デパートの脇を夕陽に向かって西に進むと、ぐゎらん堂はあった。狭くて急な階段を3階まで上る。ここも、何人もの酔っ払いが転げ落ちた難所だ。ドアを開ければ、今もみんなが迎えてくれるような気がする。中坊に、エミに、チビクロに、清水に、客席には青林堂の長井さんもいたし、赤坂ムゲンのゲバもいたし、鈴木翁二も忠治も空手の中川も羽良多平吉も、まあいろいろいたわけだが、なんといってもミュージシャン群が素敵だった。大体は店の奥に陣取って、酔っ払ってクダを巻いていた。日本中のライブハウスを回る話や、そこで出逢う人たちの話を聞くのも好きだった。ちょっと手の出ないマーチンやギブソンを弾かせてもらったりするのも楽しみだったな。  そのぐゎらん堂常連のミュージシャンたちがmegの号令一下集まって、去年は下北沢で二日間にわたってライブが行われた。まあみんな年を取った。当たり前だ。もうあれから、50年経っている。みんな青年だったのに、今ではみんな爺さんだ。それでもまだ、みんなギターを下げて日本中を回っている。いい人生じゃないか。大金持ちになったやつは多分いないけど、心の金持ちはいっぱいいるな。  

さあ、今年はいよいよ吉祥寺2DAYSだ。また彼らの、あの歌声が聴ける。楽しみだったらないよ。

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ソフトボール大会 1973年頃 撮影:沢田節子

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ソフトボール大会集合写真 1973年頃 撮影:ちゅーそつ

​大西多摩恵-司会進行

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写真は去年のメグと私 下北沢劇小劇場『スセリ台本劇場』終演後

1970年井之頭公園の南側にある高校に入学した。

皆んなめちゃくちゃ自由に走り回っていた。

今から思うとあの自由な南風に乗ってあの階段を駆け上って行ったような気がする。

あの扉を開けてから、たくさんの初めてに巡り合い、たくさんの憧れを抱いた。

何もかもが素敵だった。

自分は何者でも無いと感じながら、精一杯大人ぶって、あの椅子に座っていた。

やがて何かになりたいと、あの扉から外へ飛び立った。

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Photo by 若林純夫(ウディ)

​スカラ座、おでん太郎、3ボガのあった路地裏で。

ぐゎらん堂から飛び立った同級生のメグが去年に続いて、今年はSpecial liveと銘打ってプロデュースする。

今回、司会を仰せつかった!

当時憧れの面々を前にして、当時お子ちゃまだった私はちょっと気恥ずかしけど、

「メグ、一緒に楽しいLIVEにしょうね!」

春樹さん、由美子さんをはじめ皆んなとまた会える!とっても嬉しいよ♪

 

大西多摩恵

俳優

近年の出演作品[舞台]温泉ドラゴン「悼、灯、斉藤」(23)、プレオム劇「妄想先生」(23)、PARCOプロデュース「チョコレートドーナツ」(23)。

[映画]「PLAN75」(22) など。

またここ数年オオタスセリ企画、『スセリ台本劇場』でひとりコントにも出演。

他TVドラマや、声優として海外ドラマの吹き替えも担当している。

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メグ(矢島恵)企画制作

昨年は村瀬春樹さん、由美子さん、牟礼女子会の沢田せっちゃん、山本ヒロリン、高田富美子さん、出演ミュージシャン、ラ.カーニャの岩ちゃん、映像の並木くんの大きなサポートを得て『ぐゎらん堂・また会えたね‼︎ライブ2023』は大盛況でした。だからもう一度このミュージシャンに集まって貰いもっと多くの人に「聴いて体験して欲しい」今年も企画をしました。

 

ぐゎらん堂に初めて足を踏み入れたのは、高校の同級生、多摩恵(大西)、忍(今井)、スケベ(白石)と一緒だったのか、1人だったのか…忍が「新しく出来た店に変な奴がいる、酒を飲むようにコーヒーを飲んでるぜ」それがブルーズマンシバでした。

 

急な階段を登り「BLUES HALLぐゎらん堂-武蔵野火薬庫」と書かれた物騒な扉を開けるのは、初めの頃はドキドキで扉を少し引けば隙間から音が溢れ出し、昼間なのに外からの灯りはトイレ以外全く無し。でも開店当初は木の壁に染みついた人の影もなく客の少ない昼はまだタバコの煙でモウモウとしてなくて、ジャズやロックや時々日本の古い歌謡曲が流れ、大きなスピーカーに寄りかかってエノケンやジョセフィン・ベーカーやアメリカ南部ブルースや今までに聴いたことのない音楽の洗礼を受ける。髙田渡を聴いたのも後に順平さんの奥さんになる恵美さんが「これかけて」と持ちこんだレコードだったのかもしれない。

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​Photo by いしかわじゅん

開店記念で貰った大型マッチも使い切りそうな頃、ぐゎらん堂にはまだツルッとした肌の高田渡が可愛い奥さんと従業員だったシバを尋ねて来るようになり、それからはゾクゾクと友人知人のミュージシャンが集まり、夜な夜な誰からともなくミッドナイトジャムセッションがはじまる。

初めて友部正人を聴いたのは水曜コンサートで、「大阪へやって来た」を聴いた時の衝撃は今だに思い出すと心臓がキュンとする。今回もスケジュールが合わず来て貰えなかったのがとても残念。あがた森魚は真っ黒な癖毛のボブで黒のタートルネックに細い脚に黒のスリムパンツ。自主制作したばかりの「赤色エレジー」を小脇にギターを手にやって来て歌った時は、その独特な世界の虜になりました。終電に間に合わなくなった彼は夜に溶け込む真っ黒な出立ちで中道通りをアーリー屋敷へと消えていきました。

ぐゎらん堂の階段奥や屋上ではタンポポ団やヒルトップも練習していて…

水曜コンサートの思い出も、漫画家や作家や役者など様々なジャンルの芸術家が集まって、夜な夜な繰り広げられた宴会もここでは書ききれないが、平凡社から近日発売の”村瀬春樹著『あのころ、吉祥寺にはぐゎらん堂があった』──1970年代・日本のカウンターカルチャーの源流を探る”に当時の様子が生き生きと描かれていて読めばきっとあの空間に引きずり込まれることでしょう。

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​Photo by いしかわじゅん

Photo by 飯尾浩(ちゅーそつ)

初めてガロを読んだのもぐゎらん堂でした。入り口近くの本棚に並んでいて、漫画に没頭している人たちや、本棚に紐で吊るされた「几帳面」と表紙に書かれていたノートに、それぞれ書きたいことを書き。漫画家になる前のいしかわじゅんも、ぐゎらん堂に集まる子たちの漫画をせっせと描いていた。

月に赤猫マッチをデザインした羽良多平吉は、カオスの中でも背筋を伸ばし物静かに座わり、時折天井の向こう側をじっと視ていた。

ガロの長井さんも時折来ていたし、ガロ漫画家の鈴木翁二、阿部慎二、つげ忠男も見かけた。特にシバと仲の良かった鈴木翁二は常連でシバや写真家のキヨシ、版画家の星君たちと吉祥寺の街で酔っぱらい、子犬のようにじゃれて遊んでいた。吉祥寺に住む金子光晴も訪れた。

でもわたしにとってのぐゎらん堂はやっぱり音楽。

 

生真面目な学生風なのに斬新に”さるまた”を唄う林亭、ゆるゆるしていなかった、あの頃も大人のGwanさん、歌えば誰もが恋に落ちてしまう朝比奈逸人、いつもanan 風にお洒落なウディ(若林純夫)、髪が立っていてオーバーオール姿は声変わりする前のシバ、深夜の井の頭公園で一緒に缶蹴りしてたのに、1人お巡りさんに職務質問された異郷の下町人なぎら健壱。濃ゆーい大阪を持って来た大塚まさじ、アベちゃん、福岡フータらのウエスタンインベージョン。プロテストソングを極めるフォークシンガー、中川五郎は今も昔も酔っていて。斉藤哲夫は帰りにアーリー屋敷に泊まったのかな?

ジミー矢島といえば物干しでギターに大きな丸い穴を開けてリゾネーターを工作していた。

 

あの頃のぐゎらん堂はアパートに電話を引いていないミュージシャンたちの連絡先で、レコード室の電話前の壁には”中川イサト〇〇事務所に連絡せよ“なんてメモが貼られていた。

シェーキーズでカンカン帽被って演奏していたキヨシに珍太。あの急な階段から何度か転がり落ちた村上律を除いては、アーリー屋敷の住人達はぐゎらん堂や西側にはあまり来ていなかった。素敵なペケの笑顔と歌にもまた会える。

律とイサトをもう一度聴けたらよかったな。

水曜コンサートには若過ぎたけれど、いつも音楽の中にいて、今は幅広いジャンルで活躍中の漣くん、ぐゎらん堂元従業員カコちゃんの娘でGwanさんが言葉の魔術師と呼ぶ松浦湊ちゃんの参加も嬉しい。

 

なぜぐゎらん堂辺りにいたミュージシャンが今も大好きなのかと思う、Rawサウンドだからなんだ。音であり詩であり形やジャンルにとらわれることはなくて So Cool!

昨年のコンサートで見せてくれたそれぞれのナマに磨きのかかった演奏をまた体験できる。

会えば体調不良の話題で盛り上がるがステージではカッコいい彼らのライブをまた楽しめる事、出会えた事に感謝乾杯!

 

渡さんが生きていたらまだ歌っていただろうか、どんな歌を聴かせてくれただろうか。

『ぐゎらん堂・また会えたね‼2023ライブ・スナップショット』​撮影:山本ヒロリン(左上)その他/いしかわじゅん

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イヴェントをサポートしてくれているスタッフやミュージシャン、ぐゎらん堂の仲間にも大感謝。

これでわたしの主催は最後になると思いますが…

   楽しい時間、思い出になるイヴェントになりますように。

   みなさんのお越しを心よりお待ちしております‼

                                          (一部敬称を省略させて頂きました)

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